生活

観たものとか思ったことの整理整頓お片付け

Mandrake 『1058』

を、観てきた。お友達が出ていたので。

2018年大して演劇観たわけでもないけど、個人的にはこれで納まってよかったなという作品でした。歴代わたしの好きな作品って残る作品とサクッと観て楽しかったハイおしまい!って作品があるんだけど、これ前者だったので、例によって思い返してたら感想書き残しとこっかなとなったのでそうしました。

話はまあ暗いというか、暗いではないんだよな〜、重い?とも違うんだよな〜。なんだろう、つらい?わからん。きついとか、しんどいとか、そういう感じなんだけど、そういう言葉でまとめてしまえないような内容だった。題材が題材だし。

のだけど、演出が大変ポップでカラフルだったのがとても良かったです。舞台上で展開される身体や台詞や小道具や音や照明が気持ち悪さを保ちながら、それでもギリギリ直視できるところを攻めていく感じ。一番観るのがキツイシーンがあって、それも別時空というか観られない人観たくない人が目を反らせる場所を作っていて、まあ意図的に【逃げ場】として作ったのかどうかは分からないのだけど大変助かった。それから劇中で使用している曲がことごとく歌入りの曲だったのもわたしは好きだった。やかましさ、観づらさ、聴き取りづらさ、すらも演出であるというか。単純に選曲が自分の好みだったというのも大いにありますが。

たぶんこれきっと演出の人何回も言われまくっただろうけど、よくこの題材に手を出したなと思ったし、(いい意味で)よくこういう形に昇華したもんだ、と感動すら覚えた。

あと、これは別にカンパニーに対して「どうかと思いますこういうの!!」というわけではなく個人として感じたことなんだけど。

誰かが辛い思いをしたり、ひどい目にあったり、それで命を奪われることになってしまったり、わたしが生きていて何度もそういうニュースを目にしたし、わたしはそういうニュースたちを知っている。なんつーか、それがニュースとしてわたしをはじめとする誰かの脳に触れた瞬間、被害を受けた人物が「あなた」ではなくて「誰か」だとわかった瞬間にある種の娯楽に転じてしまうことってあると思うのよね。

劇場で『1058』を観ているわたしたちは観客という立場だけど間接的に、もしかしたら直接的にくだんの事件の被害者を消費しているのだなあ。舞台作品という娯楽として。そしてそれって、犯人たちとどう違うのだろう。そりゃまあ違うって言いたいのだけれど。そうして、同じ軸で舞台上で展開されている登場人物たちの受ける痛みや傷やつらさをもまた面白がっているのだ。観客として。などとぼんやり思ったのだった。別にそういうことを主題としている作品ではないと思うんだけど。ただわたしがそう思ったっていうだけ。とはいえきっと、そう信じたいしきっとそういう人なのだと勝手に思うんだけど、きっとこれを作ったMandrakeのお二人や、出演していた俳優さんたちは、そういうことに無自覚的な人間ではないのではないか、と思っている。少なくともわたしのお友達はそうなんだけど。多分ここ無自覚だと観てて単純に相当キツかったんじゃねえかなあ。いやわかんないけど。

最後あの子供だけが存命してるっていう事実もなんつうか、加害者の勝ち逃げじゃないんだけど。不条理っつうか、遣る瀬無さつうか、でもわりとそういうどうしようもなさって現実的なところなのかもしれないななどと思ったりした。はあ。なんか思い出してたらかなしくなってきた。どんどこ人が死んでいく描写、ある意味面白かったけど。ちょっと笑ってしまった。笑い事じゃねえ!

 

それから、痛みの描写がとても好きだった。物理的な、例えば『殴られて痛い』とか、『なんだかセックスしてしまったわたしたちの肉体』みたいな、そういうのも俳優の身体がもつ説得力みたいなところでスッと納得できる感じだった。

精神的にもというか、特に女性たちの、それぞれの立場でもって抱える、どうしようもない、やり場のない、怒りと判別のつかないようなそれ。それが本当に、すごく突き刺さってくるのがマジしんどかった。なんでこうなってんだろ、とか、わたしなにしてんだろ、とか、誰かわたしに触れてほしい、とか、近づかないでほしいとにかく、とか。日々生活してて(自分が直接そうされたわけでなくとも)たくさんある理由のなかで【女性だから】ということが大きいために受ける、痛み、というか。可憐さとしたたかさをみなさん持っていらした気がしていて、余計にその痛みが引き立っていたように思う。

だからマジで、大雑把にいうけど【何考えてるか分からない+男性という性に大きくよるところの脅威】みたいなものが怖くてヤバかった。(語彙力の欠如)

『なんとなく』『そうしてみたかったから』『面白いかと思って』なんだろうか、とか考えながら観てたんだけど、中盤あたりから加速度的に「急に!?えっ怖!!やだやだやめて!!ほんとマジでわかんねえから!!」みたいに思う瞬間が増えていって、とてもスリリングだった。スリリングって相当いい語感の言葉使っちゃったな。なんかもっと背筋に突き立てられるような。観てるこっちのなにかがゾリゾリ削られていくような感じね。

べつにこういうのに性差があるのか?と言われれば無いのかもしれないけど、やっぱり女として生まれてしまったために「あ〜」ってなることって意外とあったりするのでは?とも思うし。逆に男性はこれを観てどう感じたのだろう。ということは気になる。

いやほんと、べつにこういう演劇だったわけではないんだけど!わたしが勝手にそう思っただけなんだけど!

なべてみなさん見せ方が本当にお上手で、キラキラしいエグさ(しかもアクティングエリア超狭いし客席との距離も相当近い)というなかなか体験したことのない劇体験をしました。題材のことを考えるとこういう言葉を使ってしまうのは本当に躊躇われるのだけど、これは一つのフィクション、【作品】なのでそれに対して言いますが。これぞ見世物だなあ、と思ったのであった。感情も肉体も、剥き出しで制御している俳優たちの美しさ。演劇とはこうでなければ。(当社比)

どうもありがとうございました。